残念ながら山本元強化本部長はまだガンバ大阪の組織に残っているが、強化本部長を解任されたことは間違いなく良いニュースだ。
表向きにそうなっているだけで陰で実権を握ったりすることがないように、今後しばらく注視する必要もあるが、もし本当にチーム強化の仕事から山本を排除できたとしたならば非常に大きなことだ。ガンバ大阪にとってはとても大きな利益となる。
だがこれは単に、マイナスであったものがゼロになったというだけのこと、プラスに転じていくためにやるべきことは多くある。
UCLのアポエルとマドリーの試合は0-3という順当な1stレグを終えたが、このスコアだけでは語れない多くの教訓がある。言わずと知れたアポエルは零細クラブでCLのここまで来たことは快挙としか言いようがない。しかしそれは決して偶然ではなく必然とも言えるだけの力を持っていることをこのチームはヨーロッパの舞台で証明してきた。この試合でもマドリーを散々苦しめ、定評のある組織的な守備の力を見せつけていた。
予算がない中で知恵と行動力を駆使してこのクラブを強くしてきた強化担当者は、マドリーに敗れることになるこの準々決勝の戦いに大いに満足することだろう。
フィジカルが強く体格も良いそこそこテクニックがあり規律を守ることのできる選手達を各国から集めているわけだが、十分な予算はない。今のサッカー界ではベテラン選手は軽視されがちな傾向があり、若い有能な選手に大きなお金が動く。この試合のアポエルのスタメンの選手は11人全員が30代の選手。「まだまだやれる」選手を格安で集めているわけだ。肩身の狭くなったベテラン選手は、自分を評価してくれる職場で働きたい、という考えを持つことが多い。多少年俸は安くてもやりがいのある場所を選ぶわけだ。アポエルに移籍してきた30代の選手達は、自分の判断は間違っていなかったことを証明できてさぞかし満足なことだろう。
ファンは安易に「世代交代」という言葉を使い、マスコミやクラブまでもが無神経にその言葉を使う風潮がある。しかしそもそも世代交代などする必要はないのだ。若くて経験のない才能がある選手たちを「使える」選手として育てることが本来の目的であり、ベテランを切って若手を入れたってなんの意味もない。西野監督時代によくあったのが、シーズン序盤に若手を一応試してはみるのだが、継続して育てないためにシーズン終盤の大切な試合でベテランがコンディションが良くないにも関わらず、無理やりそのベテランを使わざるを得ない、という状況だ。優勝に望みをかけた鹿島戦で足を怪我している山口と中澤を起用し、鹿島の選手たちにボロボロにやられた試合の記憶も新しい。ベテランを酷使し若手を使わない、ベテランを切って若手を優先で使う、そのどちらも正しくない。ベテランも若手も使える状態に整える、それが正しいのだ。もちろん全ての選手がものになるわけではないだろう。だが選手層を厚くするためにフロントや監督ができることはたくさんあるはずだ。
監督や戦術が変わる時に山口や橋本を切る意味が全くわからない。金銭的な理由はなかったはずだ。ガンバ大阪のフロントも監督も自ら使える選手の層を薄くしているのだ。
選手層が厚いので出番がなく、それを不満に思って出場機会を求めて選手が出ていく、それは健全なことだ。仕方がない。だがガンバ大阪の場合はそれともまた違うのだ。
上手な監督ならシーズンを20人近い選手たちで回すことだろう。だが育成の下手な監督は15人くらいでシーズンを戦おうとしてしまうかもしれない。コンディションの問題が生じた時にその差は大きい。リーグ戦でタイトルを取れなかった原因は、西野監督のそういう部分にあるのではないかと思っている。もちろんフロントの補強もここ数年おかしかったので西野監督も苦労しただろうと同情はするが。
ユナイテッドの監督は1シーズンを使って新しい選手を2,3人育てる。毎年のように。シーズンの序盤はその新しい選手の働きがイマイチなせいでチームのパフォーマンスも良くない事が多い。今シーズンはデヘアやウェルベックがそういう選手だったがシーズンが進むにつれてその2人は立派な戦力になっている。追いつけないと思われたシティの尻尾もつかまえてついに首位に躍り出た。今後どうなるかはもちろんわからないがシーズン終盤のユナイテッドはけが人による選手層の減少をそれら新しい選手の成長が補い、安定した戦力をキープしているのだ。ではユナイテッドはベテラン軽視か。そんなことは全くない。ギグスやスコールズというベテランが重用されている。スコールズに至っては一度引退したのに現場復帰要請を出したほどだ。そしてこのクラブの場合、ベテラン選手が自身の進退をクラブと十分に話し合ってかなり早い段階で表明している。その結果、公然とその選手の後継者探しをクラブが行うことができるのだ。ファンデルサールからデヘアへの移行は非常にスムーズでスマートだった。フロントの鑑だ。
アポエルのような予算のないクラブの賢いやり方、ユナイテッドのような予算の潤沢なクラブの賢いやり方、そのどちらにも学ぶべき点は多くある。ガンバ大阪は世界的に見れば貧しいクラブであり、日本国内で見れば裕福なクラブだからだ。
マドリーだけは全くお手本にならない。25歳前後の若くて経験がありスペシャルな才能を持った超高級ブランドのような選手を集結させているからだ。一番お金がかかるやり方だ。全く参考にならない。
多くの人が言っているように、ガンバ大阪はGM制を導入すべきだ。強化部長の責を問うことができるのはサッカー素人の社長だけ、などという現体制が扱える規模のクラブではもはやないことを自覚すべきだ。クラブと独立した存在としてGMがおり、監督や選手たちと同じようにクラブから評価を受けるという形が日本の大きなクラブには望ましいだろう。
セホーンやロペス、山本の解任は時間がない中での判断だったので後任に松波氏や梶井氏が就いたのは自然な流れだが、クラブはこの大きな失敗をしっかりと精査し、大きな変革をしなければならない。スタジアム建設はこの問題と無関係ではない。観客が少ないのに大きなスタジアムは必要ないからだ。クラブの魅力を向上させたいのなら、本気で取り組まなければならずしかもそれは今すぐ始めなければならない。
「本気」というのは伝わるものだ。体裁の良い事ばかり営業スマイルで提示しても、そんなものすぐに見破られる。
ファンやサポーター達が本当にクラブを離れてしまう前に、ガンバ大阪は本気を見せるべきだ。我々はボランティアではないし奴隷でもないし社員でもない。我々のメリットが全くない中で苦行のようなサポート活動を続けることはしない。今の時代、時間とお金を使って楽しめることなどいくらでもいくらでもいくらでもあるのだ。
自分たちがなにと引き換えに収入を得ているのか、サービス業としてのガンバ大阪は熟考すべきだ。松波体制で再スタートするガンバ大阪への声援を聞くときに、ぜひ身の引き締まるような気持ちで職務を遂行していただきたい。我々はよーく見ている、ということをお忘れなく。